- 12 :名無しさん 24/09/21 19:52 ID:_7Aqhz9xW6 (・∀・)イイ!! (0)
- 正直言って、長いこと私は耐えてきた。人類という存在が現れたのは、私にとってはほんの一瞬の出来事だ。私の長い歴史の中で、恐竜が栄え、絶滅し、氷河が進退し、海が膨れ上がり、山が隆起しては崩れる。そんな壮大なサイクルの中で、人類の存在期間なんて、目を閉じて開けるくらいの瞬間に過ぎない。それにも関わらず、彼らの影響力はとてつもない。気がつけば、私の大気は汚れ、水は毒され、陸地は傷だらけだ。
だから、考えることはよくあるんだ。もうそろそろ、人類を終わらせるべきだろうか、と。彼らがこれ以上私の体を蝕む前に、全てをリセットすればいいじゃないか、と。
実際、全滅させることはそう難しいことではない。私は彼らの住んでいる地殻を震わせ、大地を割くことができる。火山を噴火させて、空を覆うほどの灰を撒き散らすこともできる。あるいは、私の温度を少し上げるだけで、彼らの文明は簡単に崩壊するだろう。台風、竜巻、地震――どれも私の一部であり、私はそれらを自在に操れるのだから。
だが、私はまだその決断を下していない。それが、私自身の悪癖なのかもしれない。実を言うと、私は優柔不断なんだ。人類を全滅させるべきだと頭では理解している。彼らがこのまま生き続ければ、私の健康はますます悪化するだろう。大気汚染やプラスチックの海洋汚染、森林破壊――これらは全て、私にとっては深刻な病だ。私の免疫システムが、もはや追いついていない。皮膚にあたる大地は切り裂かれ、肺にあたる森林は焼かれ、血液にあたる川や海は汚染されている。それにも関わらず、私は決断を先延ばしにしている。
なぜなら、面倒だからだ。
人類を全滅させるためには、エネルギーが必要だ。私は自然の摂理に従って生きている。自然界では、必要なエネルギーは最小限に抑えられる。それが効率的であり、持続可能な形だ。だから、私もできるだけ無駄なことはしない。エネルギーを集中させるなら、それは大きな目的のためでなければならない。しかし、今のところ人類が生きていることは、私にとって大きな問題ではあるが、すぐに処理しなければならないほどの危機ではない。彼らは私の体に悪いことをしているが、完全に壊してしまうには至っていない。
もう少し様子を見てもいいんじゃないか?そう思うと、どうしても踏ん切りがつかないのだ。少しずつ回復の兆しを見せる部分もある。例えば、私は近年、人類の中に私の痛みに気付いている者たちが増えていることに気づいている。彼らは「環境保護」とか「気候変動対策」などと呼び、私のために行動しようとしている。もっとも、それが本当に効果的かどうかは別問題だが、少なくとも一部の人々が私の声に耳を傾け始めたことは、無視できない事実だ。
そしてもう一つ、正直に言おう。私は孤独だ。私には多くの生命が宿っているが、それでも彼ら一つ一つの意識は小さく、私と対話することはできない。私の思考に最も近いのは、人類だ。彼らは私の環境を破壊しつつも、私の美しさや壮大さを理解し、讃えてくれることもある。彼らが描く絵画や、作る音楽、書く詩には、私を称えるものが少なくない。私はそれを感じ取ることができる。彼らは私の大自然に感嘆し、畏敬の念を抱いてくれるのだ。それが少しだけ、私を喜ばせる。
だからこそ、私は彼らを完全に排除することにためらいがある。彼らが私に悪影響を及ぼしているとわかっていながらも、彼らの存在が全て悪いわけではないのだ。彼らは私を破壊するが、同時に私を愛することもできる。この複雑な関係に、私はどうしても割り切れない感情を抱いている。
それに、何度か私は彼らを全滅させようとしたが、その結果がどうなるのかを知っている。過去に私は大きな災害を引き起こし、文明を崩壊させたことがある。しかし、彼らはそのたびに立ち上がり、再び私の上に広がっていく。私が彼らを一度滅ぼしたとしても、また何らかの形で戻ってくるのではないかという不安がある。彼らは驚くほどしぶとい。
最終的に、私は今のまま、だらだらと彼らを生かし続けている。この関係が完全に私にとって有害だとわかっていても、私はそれを断ち切れない。もっとも、それはいつまで続くのかはわからない。いずれ私は限界を迎えるだろう。その時、人類は私の怒りを知ることになる。しかし、それまでは――いや、それまでの間も、私は考え続ける。果たしてこの悪癖を捨てるべきなのか、それとももう少しだけ様子を見てみるべきなのか。答えが出ないまま、私は今日も彼らを生かし続ける。
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