- 2 :名無しさん 24/06/28 18:49 ID:al,DwOuxH- (・∀・)イイ!! (1)
- 《回答例》
─前半省略─
深く感心したジョーは、翌日友人のスティーブに言った。
「論理学を教えてやろう。君の家には芝刈機があるか?」
「いや。ないよ」
「ということは、君はホモだな!!」
「えっ? なんで?」
「えーと、昨日、酒場で、論理学の教授って人と知り合ったんだけど、
その人に、そもそも論理学ってのは何なのか訊いたら、
逆に、僕が芝刈機持ってるかどうか訊かれたんだよ」
「何だそりゃ」
「で、持ってるって言ったら、何かいろいろ論理学的な展開?があって、
僕はホモじゃない、って結論になった」
「よくわからないな」
「その後、『友達のスティーブって奴は、たぶん芝刈機持ってないんですけど、
じゃあ、あいつはホモなんですか?』って訊いたんだよ。
そしたら、スティーブについてもうちょっと質問された後、
論理学的にいって、スティーブはホモだって結論になった」
「胡散臭いな…。なんで、俺が芝刈機持ってなかったらホモなんだよ」
「一応、教授の説明メモってきたけど、僕も教授も酔ってたから結構適当かも」
「へぇ。どんな説明か聴いてみたいもんだな」
「ちょっと待てよ。えっとな……」
ジョーはスマートフォンを取り出し、何やら操作している。
メモ帳アプリにでも書いてきたか、
あるいは、教授とやらが書いてくれたのかも知れない。
彼は、画面を見ながら説明を始めた。
「まず、芝刈機がないということは、芝刈機を必要としていないからだ。
そして、芝刈機を必要としない理由としては、以下の4つが考えられる。
1. 芝刈機を使用するような庭がない(マンション住まいなど)。
2. 庭はあるが芝は生えていない。
3. 庭はあって芝も生えているが、芝刈機以外の手段で刈っている(造園業者など)。
4. 庭はあって芝も生えているが、生えるに任せている。
さて、先日君の家を訪れた時の印象から判断すると、
庭の芝は伸び放題だったから、君が芝刈機を持っていない理由は4.だ。
しかし、君の奥さんの存在を考慮すると、これはおかしい。
君の家の中は、いつ行っても掃除が行き届いている。
奥さんの綺麗好きさと真面目さの賜物だろう。
そんな奥さんが、あんなに荒れた状態の庭を放置しておくのは不自然だ。
ここで、奥さんがいつも食器を洗う際に、
ゴム手袋をはめていることに注目しよう。
手荒れなどを気にするなら、食器洗いでゴム手袋を使うのは普通のことだが、
君の家には全自動食器洗い乾燥機がある。
殆どの食器は、食器洗い機に出し入れするだけで済むのに、
その時までゴム手袋をはめているのは珍しい。
つまり、奥さんは、手肌がとても弱いか、皮膚に何らかの疾患があり、
普通の人よりも、手に気を遣わねばならない状態だと考えて良いだろう。
掃除機をかける時にわざわざ軍手をしていたことも、これの裏付けになる。
となると、奥さんは当然、自分の手で庭の芝を触ることはできない。
君には子供もいないし、庭を何とかするのは君の仕事だ。
当然、奥さんから直接頼まれたこともあるだろう。
だが、奥さんの願いに反し、君は庭を放置したままだ。
自分で刈ることもせず、業者を呼んだりもしない。
長くなった芝を刈れる芝刈機だってあるのに、
そういう芝刈機を買って、奥さんが自分でできるようにさえしない。
これはつまり、君の、奥さんへの愛が冷めていることを示している。
いや、新婚当時からずっと芝が伸び放題なんだから、
最初から愛していなかったと考えるべきだろう。
君の結婚は、偽装結婚だ」
ジョーはここまで喋ると、ビール瓶が空になっていることに気付き、
冷蔵庫から新しい瓶を取ってきて、栓を開け、コップになみなみと注いだ。
ジョーは、妻のアリスと二人の子供との計四人暮らしだが、
今日は、子供たちは野外実習で一泊するため帰宅しない。
また、これに乗じて、アリスと、
スティーブの妻のベアトリスは、二人で一泊旅行に出掛けている。
そうして、残された男二人は、ジョーの家で飲んだくれているのだ。
スティーブは、偽装結婚といった指摘を受けても、気分を害してはいないようで、
ジョーの話が途切れたところで、突っ込みを入れてくる。
「……なるほど。俺の結婚は偽装結婚だった、と。
でも、それは、ホモを隠すための偽装とは限らないんじゃないか?
例えば、税金対策とか、何か違法なことを隠すためとか……」
「ああごめん。まだ全然終わんないんだこれ。
ちゃんと、最後は君がホモだってことになるから」
「なるのかよ」
苦笑するスティーブ。
ジョーは再び、スマートフォンを見ながら話し始める。
「君は、独身時代は食器洗い機を持っていなかった。
食器洗い機は、手荒れを気にした奥さんに頼まれたか、
あるいは、偽装結婚といえども多少の気遣いは必要だと思って、
偽装の一環として買ったのだろう。
では、君は食器洗い機は普通に買ったのに、何故芝刈機は買わないのか。
ここは難しい問題みたいで、教授はしばらく考えていたけど、
『彼の出身地は、ミッドランドのローズヘイブン村ですね?』って訊かれて、
その通りだって言ったら、一気に解決した。
ローズヘイブン村郷土史料館の公式サイトによると、
中世に魔女狩りがあった頃、この村の教会では、
冤罪で魔女扱いされそうになった人を、多く匿ってきた。
そういう人の中には、同性愛者も多くいたので、
魔女狩りが落ち着いた後も、村では同性愛者も公然と住むことが認められてきた。
もし魔女狩りが無かったとしても、当時は同性愛者というだけでも迫害されてたから、
比較的マシに生活できるこの村の存在は貴重で、
他所から移住してくる同性愛者も少なくなかったらしい。
しかし、そうは言っても、多数派である異性愛者の中には、
同性愛者との関わり自体を恐れる者もいた。
そのため、村の中だけで通じる、同性愛者を見分けるための合図として、
同性愛者の住む家では、庭の芝を不必要に伸ばしておくという慣習があったんだそうだ。
つまり、君が、芝刈機も買わずに、庭の芝を伸ばしたままでいるのは、
ローズヘイブン村での古い慣習を今も守り、
自らが男性同性愛者、ホモであることを、
この慣習を知っている人だけに示しているものであると考えられる。
以上より、君は、ホモだ」
二人の間に、少し沈黙が流れた。
ジョーは、冷蔵庫から新しいビール瓶を取ってきて、
二人合わせて七本目になる瓶の栓を開ける。
「……とまあ、こういうことらしいんだけど、
実際、芝刈機とかちょっとした情報だけで、
会ったこともない人がホモかどうかなんて、わかるわけないよね」
ジョーは笑いながらコップにビールを注ぐ。
「…………いやあ、その教授って奴は凄いな。感心したよ」
「えっ?」
「大体合ってる。まあ、ここはローズヘイブンじゃないから、
芝は刈っても良いんだが、
何となく、伸ばしておいたほうが良いかと思ってな」
「…………大体、合ってる……?」
「あと、偽装結婚も合ってるけど、ベアトリスは最初から了解済み。
夫婦愛とかはないし、セックスもしてないけど、
同じような性癖だから、友達というか仲間意識はあると思う。
芝を伸び放題にしてる理由も、説明したら理解してくれたよ」
「…………」
茫然とするジョーに、スティーブは妖艶に笑いかける。
「お前は、俺が今日、お前が家に一人になる時を狙って、ここに来た理由も、
もう、わかってるんだよな?」
主な参考文献
Rosehaven Village Folklore Museum(ローズヘイブン村郷土史料館)
https://folklore-museum.rosehaven.uk/witchhunt.html
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